忍者の変装術「七方出」とは?
忍者といえば、黒装束で闇に紛れて動くイメージが強いが、実際の忍者は目立たずに情報収集や潜入を行うため、変装術を極めていた。その代表的な技術が「七方出(しちほうで)」である。これは、忍者が状況に応じて七つの異なる姿に変装し、敵の目を欺く技法である。
七方出の種類
七方出には以下の七つの変装が含まれる。
- 虚無僧(こむそう)
- 出家(しゅっけ)
- 山伏(やまぶし)
- 商人(あきんど)
- 放下師(ほうかし)
- 猿楽師(さるがくし)
- 常の形(つねのかたち)(農民や武士など)
各変装の詳細
1. 虚無僧
虚無僧とは、尺八を吹きながら旅をする僧侶の姿。編笠で顔を隠し、素性を知られずに行動できるため、情報収集に最適だった。特に城下町や寺社での潜入に使われた。
2. 出家
出家姿は僧侶の格好をし、修行の旅や布教活動を装う。寺院に滞在しながら情報を集めたり、戦乱の地で敵の動向を探ることができた。忍者は仏教の教えや経典にも精通していたため、自然に溶け込むことが可能であった。
3. 山伏
山伏は修験道の行者として、山々を巡る姿。霊山を訪れたり、護摩行を行う者として振る舞い、地域の人々から信頼を得ることで情報収集を行った。忍者の身体操作術や忍術とも親和性が高く、変装として非常に効果的であった。
4. 商人
商人に変装することで、城下町や市場で自由に動き回ることができた。商品を売り買いしながら、人々の動向や噂話を集めることが目的である。商人としての交渉術や話術も重要であった。
5. 放下師
放下師は大道芸人の一種で、曲芸や奇術を披露しながら観客を楽しませる。人々の注目を集めることで、警戒心を解き、密かに情報を探ることができた。軽業や手品などの技術も、忍者の訓練の一環として取り入れられていた。
6. 猿楽師
猿楽師は、能や狂言などの芸能を演じる者。公家や武士の前で演じる機会も多く、上層部の動向を探るのに適していた。忍者は舞台の裏で密談を盗み聞きしたり、演者として城内に潜入することもあった。
7. 常の形
常の形とは、農民や武士など、一般的な人々に扮する変装である。農村や戦場に紛れ込み、敵の動きを探ったり、兵糧の状況を確認することができた。特に農民に変装する際は、農作業の知識も必要であった。
七方出の目的
七方出は単なる変装ではなく、環境や状況に合わせて自然に溶け込むことが重要であった。敵に怪しまれず、情報を集めたり、逃亡経路を確保するなど、忍者の生存戦略として欠かせない技術であった。
現代における七方出の応用
現代でも、ビジネスや交渉の場で相手に合わせた話し方や態度を使い分ける「心理的な変装術」として応用できる。忍者の知恵は、コミュニケーションや交渉術、危機管理などに生かされている。
まとめ
- 七方出は、忍者が使う七つの変装術
- 虚無僧、出家、山伏、商人、放下師、猿楽師、常の形に分かれる
- 目的は敵に気づかれずに情報収集や潜入を行うこと
- 現代でも応用可能な心理的変装術
忍者の知恵と工夫は、今の時代にも役立つものが多い。七方出の精神を学び、現代社会での立ち回りにも活かしてみてはいかがかな?